フォトグラファー・池野詩織的「部屋」の撮り方。【How to use A film-pack? #3】
チェキフィルム1箱=10枚で1つの被写体を撮り下ろす新連載「How to use A film-pack? ── チェキフィルム1箱、どう使う?」がスタート。チェキフィルム1箱のみを使用して、テーマに選んだ被写体をクリエイティブに(?)撮影、チェキプリントする実験的企画です。第三回は、フォトグラファーの池野詩織さんが登場。「部屋」をお題に、最新チェキカメラ「“チェキ” INSTAX SQUARE SQ40(以下、SQ40)」で撮影して頂きました。
PROFILE
池野詩織
写真家。1991年神奈川県生まれ。近年ではファッション誌の撮影、ブランドのルックや広告撮影、音楽家のビジュアル撮影など、ジャンルを問わず様々な写真表現の挑戦を続けるほか、定期的に展示の開催や作品集の発表など、東京を拠点に国内外で精力的に活動している。2022年にLAの写真出版レーベルDEADBEAT CLUBよりzine『SADO』を出版。
「部屋」をテーマにチェキプリントした10枚
「一人暮らしの部屋の中で、唯一の同居人の観葉植物。最近、葉っぱがどんどん生い茂ってきてすごい生命力を感じます」
「この部屋には窓が沢山あるのがお気に入り。夏雲にこころ惹かれて、よくぼーっと眺めています」
「お風呂場の備え付けの棚は無造作に並んだお気に入りゾーン。奥にある犬の3Dパネルは、この部屋に引っ越してきた当初から、サイズがぴったりだったのでなんとなく置いています」
「キッチンにある自作した調味料棚。こうして改めて見てみると、生活感丸出しでごちゃごちゃしてますね(笑)」
「最近オークランドの友達にもらったレコードスリーブマットがかわいくて、なんとなく撮った一枚」
「ソファーに寝転んで、部屋でダラダラしている時に見ている景色。自分にとっては日常過ぎて、普段気にも留めていない景色をあえて撮ってみました」
「部屋の動線になっていて、散らかりがちなベランダ前。積読している本とか片方だけのスリッパとか、自分にしかわからないだらしない生活の痕跡みたいなのものが散らばっています」
「普段作業しているデスク周り。マグカップが好きでいろいろと集めているんですが、写っているマグは作業中の相棒。持っている中で一番大きくて、たくさん入ります」
「集めたマグカップの一軍が並ぶ棚。左上の筋肉マグは形が使いづらいんですが、なんだか応援されている気持ちになるので、頑張りたい時に使っています」
「ガラクタを集めるのが昔から好きで、最近のお気に入りたちがここに並んでいます。ビーズでできたウサギは、先月札幌でゲットした新入り!」
INTERVIEW:池野詩織「無意識な瞬間を狙った一枚こそ愛着が持てる」
──今回、撮影のテーマに「部屋」を選んだ理由を教えてください
すごく悩んだんですが、一番自分に近くて無意識的な場所である“部屋”をテーマに選んでみました。毎日同じ場所で生活している中で、自分でも気がついていない生活の痕跡のような物を集めて撮影しています。友達を撮ったり、チェキプリントをそのままプレゼントしたり、チェキはコミュニケーションツールとしてももちろん最強だけど、私が撮影するなら何か違う提案ができたらいいなと思って。無防備な状態に「チェキ」っていう一つのフィルターを通すような感覚で10枚撮り下ろしてみました。
──チェキ(SQ40)を使ってみて、新しい発見はありましたか?
「こうやって撮ろう!」と思うと、意外と良いものが撮れなかったりするんですよね。部屋でも人でも、自分の作為が出てしまうと気に入った仕上がりにならないことが多いので、テーマを部屋に決めてからも撮影用に部屋を整理整頓したり、掃除したりしないようにしました。デスクで仕事をしたり、キッチンで料理をしたりバタバタと生活する中で、ふと浮かび上がってくるフレームに向けてあまり考えないまま撮影しています。生活空間の中でわざわざチェキで写真を撮ることが非日常的な行為だったので、できるだけその違和感をなくすのが難しかったですね。
──普段チェキカメラやフィルムカメラを撮影で使用されることが多いと思いますが、その点でSQ40ならではの魅力を教えてください
まず、操作がすごく簡単で感覚的に撮影できるところが気に入っています。例えばフィルムやレンズダイヤルがあったりしたら、ついついこだわって撮影してしまうところを、シンプルに思いつきで撮れる感じがチェキならではですよね。あとはデザインがシックでかわいい! 世代的にキュートな丸いデザインのチェキカメラに馴染みがあったので、撮影していたら友達にも「それチェキなの?」とびっくりされました。マットな質感も、持っていて手触りが心地良いです。
──スクエアフォーマットで撮影してみた感想を聞かせてください
スクエアの画像は、SNSでも馴染みがあるのできっと誰でも撮りやすいですよね。私はminiフォーマットのチェキよりもスクエアに広くなった分、背景までしっかり映るところが好きです。あと、正方形だから横画角と縦画角のどちらで撮るか悩まなくてもいいところも嬉しい。いつもカメラで撮影する時はどちらの画角で撮るか考える時間が瞬間的にあるので、撮りたいものを撮りたいときに迷わずシャッターを押せるところがお気に入りです。
──読者の方が「部屋」を撮影する際の気をつけたいコツがあれば教えてください!
「こうやって撮ろう!」とか、「こうやって写そう!」とかあまり考え過ぎずに、無意識的な瞬間を狙った一枚こそ愛着が持てる仕上がりになると思います。何となく撮ってみる気持ちを大事にするとおもしろいはず!
photo by 池野詩織
text by Kazuki Hyodo
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