FUNが広がるinstax mini Link 3™。担当者に聞く 、ARエフェクトやコラージュ機能誕生の秘話
スマホの画像をかんたんにプリントできる、チェキ™の人気プリンター・mini Linkシリーズ。そんなmini Linkシリーズより、新製品「instax mini Link 3™(以下、mini Link 3)」が2024年9月5日(木)に発売されました。ARエフェクトやコラージュプリントが手軽に楽しめる、新たな“FUN”が詰まった新製品はどのように誕生したのか。誕生の裏側を、UIデザイナーの志村さん、企画担当の吉田さん、企画担当兼アプリ開発担当の水上さんに聞きました。
「FUNのグラデーション」を具体化して生まれた新機能やUIデザインとは?
──mini Link 3は、チェキ™の人気プリンター・mini Linkシリーズの最新製品ですが、開発はどのように進めていかれたのでしょうか?
吉田さん:これまでmini Linkシリーズは、“遊べる”プリンターとして進化を遂げてきました。そんななかで、「mini Link 3はどこを進化させる?」となったときに、軸である「FUN」は変えずに、メインターゲットである高校生や大学生の女性の「日常の過ごし方」にフォーカスしようということになりました。そこが、製品開発の出発点でしたね。
水上さん:メインユーザーの「日常の過ごし方」の中にはどんな「FUN」があるんだろう、というのを探っていきました。例えば、パーティーなどで盛り上がっているときのワイワイした「FUN」もあるだろうし、1人で趣味に没頭しているときの静かな「FUN」もあるだろうと。そんなメインユーザーの日常にあるさまざまなFUNを、チーム内では「FUNのグラデーション」と呼んでいて。そんな「『FUNのグラデーション』に応えられるプリンターになるといいな」というイメージを、具体化していきました。
▲ 左:志村さん / 中央:吉田さん / 右:水上さん
──具体化する中では、どのようなことを行ったのでしょうか?
吉田さん:まず始めに「FUNのグラデーション」において、mini Linkシリーズの既存機能がどの「FUN」に当てはまるのか確認していきました。そうしたら、自分たちがまだカバーできていないFUNが2つあることが分かって。1つ目が、大人数でワイワイ楽しむFUN。2つ目が近しい友だちと少人数でまったり楽しむFUNです。そこで、この2つのFUNにアプローチするにはどんな機能を作ったらいいだろうか、というのを考えていきましたね。
──なるほど。その2つのFUNには、どの機能が当てはまるのでしょうか?
水上さん:ワイワイ楽しむFUNに向けた機能が「instax AiR Studio™」。まったり楽しむFUNに向けた機能が「Click to Collage」です。
志村さん:この「FUNのグラデーション」の考え方は実はUIデザインにも活かされていて、専用アプリ『mini Link』は画面遷移に色のグラデーションを採用しています。まるで画面遷移に合わせて感情も動くようなイメージで、ワイワイ楽しんでほしい機能には暖色系のグラデーション、まったり楽しんでほしい機能には寒色系のグラデーションを採用しています。
──UIデザインにも「FUNのグラデーション」が隠されていたんですね。本体のLEDが3色に光るのも印象的でした。
吉田さん:プロダクトデザインは別で担当者がいるのですが、mini Link 3はシリーズ製品でありながら3代目のモデルとして刷新感もあるデザインを意識して進めてもらいました。3色のLEDは「FUNな気持ちの広がり」を表現したカラーになっていて、本体カラーに合わせて光る色も少し変えています。それぞれ手に取ってくださるユーザーさんを思い浮かべながらカラーを選定しましたね。
水上さん:アプリとmini Link 3をより一体化した製品にみせるために、プリント中・データ転送中など、プリンターの状態やユーザーの操作に応じて、LEDの色や点灯のパターンを細かく変化させています。
──すごい。そんな細かいところにまでこだわりが!
吉田さん:色を見ながら「この色じゃない、この色じゃない」って、理想に近づけていきました。本当に細かいポイントなんですけど、そういう遊び心があってもいいよねって話になって(笑)。
志村さん:そうそう。気づかない人の方が多いかもしれないところに、すごくこだわっています(笑)。使い込んでいただくほど、新しい気付きがあって、より製品に愛着を持ってもらえると思います。
──この他にも使っているうちに気づくポイントがありそうで楽しみです。
一同:機能には全然関係ないんですけどね(笑)。
注目の新機能「instax AiR Studio™」&「Click to Collage」へのこだわり
──専用アプリ『mini Link』には、立体的なARエフェクトで自由に空間を彩り撮影できる「instax AiR Studio™」や、フォトブースの感覚で連続撮影からコラージュプリントを作れる「Click to Collage」など、さまざまなFUNな機能が詰まっています。どちらも新機能ですが、始めに「instax AiR Studio™」が誕生した経緯を教えていただけますか?
吉田さん:まずmini Linkシリーズというのは、必ずスマートフォンと接続して使っていただく製品なので、スマートフォン側の機能の進化に合わせて、Link 3も進化させたいよね、という思いがあって。そこでまず、「mini Link 2で好評だった空間に絵や文字を描けるAR機能『instax AiR™』をもっと大人数でワイワイ楽しめる機能に発展させられないか?」という視点が生まれました。そのうえで、「メインターゲットの女の子たちは、実際どういう写真を普段撮っているんだろう?」という話になりました。
メンバーで手分けしてSNS上の色々なアカウントをチェックして、最近の流行りの撮影を探っていきました。すると、最近の子は風船をたくさん飾りつけて誕生日を祝っていたり、好きなデコレーションと一緒に撮影していたりする子が多いということが分かりました。「これがアプリでAR技術を使って簡単にできたら、飾る時間も短縮できるし日常的に楽しんでもらえるんじゃないか?」と思い、水上さんに「これってARでできますか?」と聞いたのが始まりです。
水上さん:そうですね。mini Link 2のinstax AiR™も私が開発を担当したのですが、mini Link 3のinstax AiR Studio™では実際に周囲の空間を飾りつけをして撮影する体験をアプリで再現できるように、全く新しい機能として企画・開発しました。お陰で技術面でもデザイン面でもかなりハードルが高かったです(笑)。
吉田さん:そうですよね……(笑)。飾り付けの素材として3DCGをたくさん制作して、ARエフェクトとしてその場に置けるようにしていくというのは、完全に初めての試みですよね。
水上さん:今回は、スマホカメラで空間や人を認識して、3DCGを目の前の風景に馴染むように配置する新しい技術を導入しました。かなり難解な技術なのですが、それをユーザーに意識させず、直感的で使いやすい機能として作り上げていく、という点でかなり苦労しましたね。
──開発にはどれくらいの期間を要したのでしょうか?
吉田さん:技術開発に費やした期間と、機能をブラッシュアップして使い勝手を改善していた期間を合わせると、かなり時間がかかっていますよね。
水上さん:そうですね。初めてこのアイデアが出たときから自分でちょこちょこデモアプリを作り始めていたんですが、なんだかんだで技術を確立するまでは半年くらいはかかったかな。
志村さん:3DCGの制作を含めると1年くらいかかっていますね!
水上さん:CGやアニメーションを作り始めたら、その段階で色々な課題が出てきて……。例えば映像はきれいだけどアプリが重くなってしまうとか。そういった課題をメンバー一丸となってブラッシュアップして、結局1年間くらいかかりましたかね。
志村さん:そうですね。CGの作り込みに一番時間がかかったんじゃないかと思うくらい、ずっとやっていた気がします。
──志村さん的には、CGに一番苦労された印象ですか?
志村さん:そうですね。苦労した点であり、こだわった点でもあります。「リアルだけどデータを重くしちゃいけない、だけど使ってもらえなければ意味がない」という思いから、“写真と合成した時に違和感のない”絶妙なCGを目指しました。
──“写真と合成した時に違和感のない”というと?
志村さん:メインターゲットの女の子たちはデジタルネイティブでもあるので、彼女たちが見たときに違和感を感じないCGというイメージです。例えばカップケーキの“クリームっぽさ”や、アイスクリームの質感などにこだわりました。見ただけじゃ絶対に「口溶けがいい」とか分からないと思うんですけど(笑)、クリームは滑らかすぎると3Dっぽいからちょっとだけ毛羽立たせてみたり、アイスクリームもちょっとザラザラ感を出したり。水上さんに「すみません、時間ください」って言いながらこだわって作りましたね。
吉田さん:ユーザーが使ってみて、「実際に撮影してみたくなるくらいのリアル感」っていうのをすごく追求してくださったなと思います。
志村さん:モチーフに関しても、流行を意識しつつも普遍的なものを選びたくて、ここ10年間の女子高校生の流行をリサーチして、さらにそれがグローバルでも使ってもらえる素材なのかを現地法人のメンバーにも意見をもらいながら決めていきました。
──そこまで徹底されたんですね。風船のARエフェクトもすごくリアルですし、360°どこから見てもまるで本当にそこにあるかのようですよね。
吉田さん:ありがとうございます。実は横から見ても後ろから見ても「そのものらしくある」ということと、「写ったときに違和感がない」ということがなかなか両立できなくて苦労しました。
志村さん:風船の軽さを表現することにもとても苦労しましたね。ちなみに風船に関しては、実際に一度実物を飾りつけてみたんです。準備から飾り付け、そして撮影から片付けまでを一度実際にやってみたら、その大変さが分かったし、さらにそのときに「Back」「Décor」「Effect」の概念も生まれたんです。
──どんな気づきが、アイデアのきっかけになったのでしょうか?
志村さん:実際に風船を飾り付けた場合、カメラ近くに配置した風船と後方に配置した風船の遠近感があることで、角度を変えて撮影すると立体感のある写真になります。当初のCGの配置位置では風船が全てカメラから同じ距離にあるため平面的で、どの角度から撮影しても折角の3DCGのメリットである立体感を感じられず、同じような写真になってしまうことに気づいたんです。だったら、instax AiR Studio™でも、よりカメラに近い場所を意味する「前」という概念と、より背景側を意味する「後ろ」という概念を作って、そこにARエフェクトを配置できるようにすれば、違う角度から撮影したときに立体的なチェキプリント™が楽しめるんじゃないかと気づいて。さらに、周囲に紙吹雪を降らせたり、ライティングの効果を追加できる「Effect」があれば楽しんでもらえるんじゃないかと思い、「Back」「Décor」「Effect」の3つを作りました。
▲ 志村さんのお気に入りARエフェクト:Back「06」×Décor「06」
──なるほど! 「instax AiR Studio™」撮影時には、リモートライブビューで撮影されている側も画面が確認できますが、これはどんな経緯で?
水上さん:これは私が提案した機能なのです。今回、新しく導入したAR技術はスマホの背面にあるリアカメラで撮影することで実現できるのですが、これだとAR撮影の被写体になる人が自分がどんな風に写っているのか何もわからないんですよね。でも、撮影される人もARエフェクトがどのように配置されているのか、分かった上で撮影された方が楽しめると思い、もう一台のスマホを用意することで、撮影する人と同じようにAR撮影の状況を確認したり、シャッターを切ったりできるようにしています。
──細部にまでユーザーへの配慮を感じます。「Click to Collage」についても、誕生した経緯をお聞かせいただけますか?
吉田さん:「instax AiR Studio™」は「instax AiR™」を進化させるという発想でしたが、「Click to Collage」はゼロイチの発想でした。これも、メインターゲットの女の子が実際に撮っている写真をSNSなどで調べているなかで気づいたことなのですが、友だちと連写をして、その中から好きな写真をピックアップしたり、お気に入りの数枚をコラージュして投稿したりしている子が多いことに気づいたんですね。
元々『mini Link』のアプリにはコラージュプリントという、カメラロールからコラージュプリントを作れる機能が搭載されているのですが、リサーチしたところ、オシャレなコラージュプリントを作っている方はいても、若い子がやっているような楽しみ方で使っている方はあまりいなくて。それなら、撮影からコラージュを作成してプリントするまでの体験を1つの機能にしたら使ってもらえるんじゃないかという発想から、「Click to Collage」が生まれました。
志村さん:実際にみんなで試してみたときの試作がこちらです。写っているのはプロダクトデザイナーです!
吉田さん:試しにやってみたら、「え、めっちゃいいじゃん」って盛り上がりましたよね(笑)。
──より自然な表情も撮影できて、まさにFUNな機能ですよね。本当にさまざまな要素が詰まった製品ですが、それぞれ特に愛着のあるポイントや機能はありますか?
水上さん:私は初代mini Linkから今回のmini Link 3まですべて開発を担当しているんですが、mini Link 3はプリンター本体のデザインも大幅に進化しています。このLEDが光ったときに透けて見えるっていうのはとても難しいことなんですね。
吉田さん:そうですね。チェキ™のフィルムって露光させちゃいけないのに、本体から光を透けさせようとしているっていう、すごく矛盾したことをしている(笑)。
水上さん:そうなんです(笑)。プロダクトの担当者もかなり苦労して実現させてくれたのでそこも気に入っていますし、今作には「instax AiR Studio™」と「Click to Collage」という、強力な機能も加わりました。初代instax mini Link™から多くの関係者の想いと拘りを積み上げて進化させてきたことを体感していることもあり全てに愛着を持っていて、mini Linkシリーズというブランド・商品そのものが好きです。
▲ 水上さんのお気に入りARエフェクト:Effect「07」
吉田さん:水上さんが言ってくださったように、本体デザインの実現がめちゃくちゃ大変で(笑)。実はLEDを透けさせるために、前面と背面には違う素材を使っているのですが、その色合わせにとても苦労しました。もう訳がわからなくなるくらいの数のモックを確認して、最終的には3色ともLEDがきれいに光ってかつ前面と背面が同じ色に仕上げることができたので、苦労した分愛着を感じます。あとは「Click to Collage」の機能。実際に使ってみるととても楽しいですよね。
志村さん:吉田さんは、本当に何個もモックを確認してくれたよね(笑)。私はやっぱり「instax AiR Studio™」が一番苦労した点でも、こだわった点でもあるので、愛着がありますね。カーテンとお花がセットになったARエフェクトでは、布の透け感にもこだわりました。水上さんにも「そこまでこだわるんですか?」って言われたくらいこだわったので(笑)、思い入れがすごく強いです。
▲ 吉田さんのお気に入りARエフェクト: Décor「04」
──皆さんそれぞれ苦労された点が愛着に繋がっているのかもしれませんね。では最後に、mini Link 3のユーザーに向けて、おすすめの楽しみ方やメッセージをいただけますか?
志村さん:実は「Décor」では1つだけじゃなく、何個もARエフェクトを置けるんです。たくさんARエフェクトを置いてその空間の中で遊ぶことができて、かつどんな角度からも撮影できるので、本当に3Dならではの遊び方ができると思います。しかも、これは多分何度も遊んでいないと気づかない機能なので、ぜひユーザーの皆さんには、mini Link 3を愛してもらって、色んな楽しみ方を見つけてほしいです。
吉田さん:本当はmini Link 3をスマホと一緒に持ち運んで遊んでいただけるのがベストですが、外で友だちと楽しく撮影して、家に帰ってゆっくり振り返ってお気に入りの思い出をプリントする、という使い方もできるよう色々工夫をしています。たとえばinstax AiR Studio™では、「プリントする前に、みんなパシャパシャ撮影を楽しみたいよね」という思いから、20枚まで撮影した画像データを一時保存できるようにして、後からプリントできるようにしています。なので、これまでよりももっと気軽に楽しんで使ってもらえたらうれしいです。
水上さん:チェキ™って唯一無二のコミュニケーションツールと言われていますが、「instax AiR Studio™」と「Click to Collage」は友だちと一緒になって盛り上がって遊べる機能なので、1つのコミュニケーションツールになってくれると思います。なので、mini Link 3を使って、日常をより楽しいものにしていただけたらうれしいです。
※1 instax™、チェキ™、チェキプリント™、instax mini Link™、instax mini Link 3™およびinstax AiR Studio™は、富士フイルム株式会社の登録商標または商標です。
※2 Android端末およびiOS端末対応の無料アプリ。Android端末の場合はGoogle Playより、iPhoneなど iOS端末の場合はApp Storeより取得可能。 Android、Google Playは、Google Inc.の商標または登録商標です。iPhone、App Storeは、Apple Inc.の商標です。 iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
※3 チェキプリント™はイメージです。
photo by 垂水 佳菜
text by 那須 凪瑳
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