
チェキ™新製品「instax WIDE Evo™」。約10万通り以上の撮影表現を実現させた、開発の裏側
instax™“チェキ”シリーズにおいて、最上位モデルのハイブリッドインスタントカメラ「instax WIDE Evo™以下、WIDE Evo)」が、2025年2月6日(木)に発売されました。instax™史上最多のエフェクトを搭載し、繊細な表現をじっくりと楽しめるこだわりの詰まった一台です。
今回は、開発担当の福田さん、企画担当の三浦さん、デザイン担当の亀井さんに新商品誕生の裏側を伺います。
目指したのは、“大人”がこだわりながら楽しめるチェキ™の最上位モデル
▲ 左:開発担当・福田さん / 中央:企画担当・三浦さん / 右:デザイン担当・亀井さん
──「Evoシリーズ」最上位モデルとして登場したWIDE Evoですが、開発はどのようにスタートしたのでしょうか?
亀井さん:実は、Evoシリーズの前身「instax mini Evo™」の発売前からWIDE Evoの企画プロジェクトは始まっていたんです。ワイドフォーマットの最上位機を作るというのが最初のお題でした。
三浦さん:商品開発の前に、ワイドフォーマット対応の既存製品がどのように使われているのかユーザー調査をしました。すると、僕たちは友人同士や家族などのグループショットに使われることを想定していたけれど、実際には余白を生かして花や風景などを撮っている人も多かった。「作品」っぽく撮っている人が多かったんです。そういった背景から、よりクリエイティブに、こだわりの作品づくりを楽しんでいただける製品を作ろうという企画が立ち上がりました。
亀井さん:そんななかで、先に発売されたmini Evoの人気に火がつき、Evoシリーズの最上位モデルとしてWIDE Evoを作ることになりました。
──「ワイドフォーマット」であることの方が先に決まっていたんですね。Evoシリーズの製品として作ることが決まってから、どんな風にコンセプトや企画が洗練されていったのでしょうか?
亀井さん:前身のmini Evoは「エモさ」をキーワードに商品企画がされました。10種類のフィルムエフェクト × 10種類のレンズエフェクトで多彩な表現ができること、アナログな操作感など、そういった情緒的な価値です。それらを活かしながらも、WIDE Evoとして「新たな個性」を築くことを目指して、商品企画が進んでいきました。
WIDE Evoは、こだわりを持った30代男性をペルソナとして作られた商品です。持ち物や趣味など、一個一個のことにこだわりを持っている人に響くようなカメラにしようと、機能やデザインを仕上げていて。たとえば既存のエフェクトにプラスして、レンズエフェクトの度合いを100段階で調整できるようにしました。じっくりとこだわって撮影できるカメラになっています。
▲撮影:亀井さん / フィルムエフェクト「モノクロ」× レンズエフェクト「ノーマル」 × フィルムスタイル「湿版印刷」 × 広角モード
──まさに今お話に出た豊富なエフェクトは、WIDE Evoの大きな魅力ですよね。各10種類のフィルム・レンズエフェクトも、mini Evoからパワーアップしているそうですね。
亀井さん:そうですね。mini Evoでも人気のあったアナログ感をさらに追求しています。
福田さん:商品企画やデザイナーから来るイメージを、カメラに搭載可能なエフェクトに具現化していくのは難しかったです。実際にあるレンズフィルターなどを、リファレンスとして渡されるんですよ。
たとえば、「ビームフレア」というエフェクトもレンズフィルターを参考にしているのですが、最も検証に時間がかかったエフェクトです。ビームの太さ、長さ、角度、色の変化など、細かい調整が必要で。何度も試作して実装していきました。
──特に気に入っているエフェクトはありますか?
福田さん:先ほどの話の通り、「ビームフレア」は開発が大変だったので、おすすめしたいです(笑)。それ以外だと、「ソフトグロー」というエフェクトは個人的に気に入っています。光をふんわりとにじませるエフェクトなのですが、光源の周辺が優しく描写されるので、使ってみてほしいですね。
▲撮影:福田さん / フィルムエフェクト「アンバー」× レンズエフェクト「ソフトグロー」
三浦さん:確かに、優しいボケ感になりますよね。夜景を撮るのにも向いているエフェクトだと思います。
──エフェクト以外にも、広角モードやフィルムスタイルを使うとさらにバリエーション豊かな撮影ができますね。
三浦さん:僕は実物を見て、1番最初にすごい!と思ったのが、広角モードだったんですよね。チェキ™と広角レンズという組み合わせは意外性があると思うのですが、実際に使ってみるとすごくしっくりくる。instax™史上最も広角なレンズを搭載しており、ワイドフォーマットを活かしたダイナミックな表現が可能になりました。
▲撮影:三浦さん / フィルムエフェクト「ライトグリーン」× レンズエフェクト「色ずれ」 × フィルムスタイル「コンタクトシート」 × 広角モード
──専用アプリでは、撮影した作品を共有し合える機能「Discover Feed」も開発されています。色々な機能があるカメラだからこそ、他の人がどんな設定で撮影したのか気になるので、「Discover Feed」があるのは嬉しいなと思いました。
福田さん:いままで、社内ではいろいろな議論があり、富士フイルムの過去製品ではこういったソーシャル機能はあまり実現してこなかったんです。それが、今回は実現できたので嬉しかったです。
亀井さん:これまでの流れに縛られすぎず、ユーザーにとって1番楽しめる形を追求して、「Discover Feed」が実現したんですよね。
三浦さん:「Discover Feed」にはプロのフォトグラファーさんの作品も表示されているので、作品作りの参考にもなると思います!
ボディのシボ目から、レバーのクリック音まで。細部にまで詰め込まれた“こだわり”
──デザイン面にも「こだわり」をひしひしと感じているのですが、コンセプトは?
亀井さん:デザインのコンセプトは、「最古と最新の融合」です。アナログカメラのようなクラシックな佇まいをベースに、それをさらに進化させることを目指しました。カメラ誕生初期の箱型のカメラを参考にしつつ、フォルムやディティールにモダンな要素を取り入れています。薄くて四角いプロポーションをクラシックなカメラデザインに落とし込むのには苦労しました。
──操作感も、アナログな部分があって素敵です。
亀井さん:アナログの良さを感じてもらえるように、操作感にこだわった「所作を生み出す」要素を随所に盛り込んでいます。例えば、レバー型のレリーズは珍しい形だと思うのですが、薄型のボディを握った際に押しやすく、力を入れやすい理にかなった形をしています。
それから、プリントクランクも特徴的です。アナログなフィルムカメラの巻き戻しレバーをイメージして、手で巻き上げる形式にしました。レバーを巻き上げると画面の中でもチェキプリント™の完成イメージが出てきます。プリントまでの期待感も高まるし、やっぱりプリントをやめようと思ったら途中でキャンセルすることもできます。
あとは、レンズの度合い調整に使うリングの操作感も、開発メンバーと協力し、細かく調整しました。
福田さん:どういう質感がいいのか、どのくらいの力量で動くといいのか、1つのクリックがどのぐらいの角度がいいのかとか……。たくさん試して、気持ちの良い回転になるようにしました。
亀井さん:小さくカリカリと回る、この操作感がいいんですよね。樹脂でできたパーツなので、そのなかで良い操作感に仕上げるのは特に難しかったと思います。
──デザイン面で、みなさんが特に気に入っているポイントはどこですか?
亀井さん:細かい部分ですが、フィルムスタイルのボタンが気に入っています。これは、真空管をモチーフにしているんです。フィルムスタイルを「プリントする前の最後の変換機能」と定義し、信号を変換するイメージで真空管風のボタンにしました。押すと「ブン」と音がして起動し、オレンジ色に光るんです。アナログの温かみを感じる特長が生み出せたと思います。
福田さん:これも難しかったんですよ。微妙な光の見え方を調整するのが大変で、何種類も作ってはダメ出しされて(笑)。最後まで調整していた部分のひとつです。その他だと、僕はボディ全体の、シボ加工(製品の表面にシワ模様をつけること)にも思い入れがあります。
亀井さん:このシボ目、じっくり見てもらうと六角形になっているんですよ。銀塩フィルムを拡大するとその結晶が六角形なんです。だから、富士フイルム製品のストーリーとして相性が良いモチーフだと僕は考えています。あと、僕が「亀井」なので、六角形は相性が良いですよね(笑)。
福田さん:そんなこだわりのあるテクスチャーを最大限に活かしたいと考えました。部品の繋ぎ目で六角形の模様が崩れないように、金型の加工にも細心の注意を払っています。
▲ダイヤルの小さな凹凸にも六角形が採用されている
──本当にたくさんのこだわりが詰まったカメラなんですね。最後に、WIDE Evoのユーザーに向けて、おすすめの楽しみ方やメッセージをください。
亀井さん:ディティールまで妥協無く、「やり切った!」と言える仕上がりになっています。とにかくカメラを手に取って操作して撮影する楽しみを味わってほしいですね。その過程で、細部までのこだわりに気づいていただけたら、とてもうれしいです。どこを切ってもこだわりが顔を出すカメラだと思うので、長く楽しんでいただけると思います。
福田さん:WIDE Evoに合わせて、ストラップやケースも作りました。外観からこだわったカメラなので、ぜひ外に持ち歩いてほしいなと思います。お出かけ先の色々なシーンでさまざまなエフェクトを試して、自分に合った設定を見つけてほしいです。皆さんの「想像を超える」1枚を楽しみにしています。
三浦さん:お二人がおっしゃる通り、こだわりたっぷりのカメラです。カメラが好きだけど今までチェキ™を使っていなかった方々や、インスタントカメラに興味があったけれど未挑戦という方々にも、自信を持っておすすめできます。機能面でもデザイン面でもたくさんの魅力が詰まったカメラなので、ぜひ、楽しんでください。
※ instax、チェキ、チェキプリント、instax WIDE Evo、instax mini Evo は、富士フイルム株式会社の登録商標または商標です。
※ チェキプリント™はイメージです。
photo by 高見 知香
text by 白鳥 菜都
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