フォトグラファー野本敬大がスクエアチェキ・SQ1で切り取る風景と人。フィルムカメラの魅力とは
2020年11月6日(金)に発売された最新モデル「“チェキ” instax SQUARE SQ1(以降、SQ1)」。スクエア型のスタイリッシュなボディに<明るさオート>と<セルフィーモード>を搭載した、初めてチェキを使うという方も存分に楽しめるシンプルさが魅力の1台です。
今回は、そんなSQ1の魅力に迫る特別企画としてSNSを中心に注目を集めているフォトグラファーの野本敬大さんにインタビュー。ひと足早くSQ1を使って撮り下ろしていただいた写真とともに、自身と写真のこと、チェキを通じて感じたアナログカメラのおもしろさや撮影エピソード、フィルム写真の魅力などについて語っていただきました。
PROFILE
1995年愛知県生まれ、東京都在住。
2018年に国立大学を卒業後、フリーの写真家 / 映像作家として本格的に活動を開始。
現在は広告、ファッション、アーティスト写真などを中心に幅広く活動。
★野本敬大関連リンク
カメラを使って切り取りたいのは
今ここにある再現できない瞬間
「写真を撮りはじめたのは、高校三年生のときです。友達が毎朝誰よりも早く登校して誰もいない教室を一眼レフで撮ってSNSにあげていて。それがすごく好きで毎朝見ていて。その友人がきっかけで一眼レフを買って、どうしてあの時あの写真がいいと思ったのかを言語化できなくて、ずっとそれを考えながら今まで撮っている感じです」
「最初のうちは僕も教室を撮ってみたり、友達を撮ったり、旅行先の風景を撮ったり。そうしている中でちょっとずつわかってきたのは、あの時あの教室の写真をいいと思ったのも僕がいま人物写真を撮っているのも、そのときにしかない時間みたいなものにすごく価値を感じていて。おそらく高校三年生の早朝の教室の風景って、すごく限りのあるもので、そこに潜在的な魅力を感じているんだろうなって。『この時間のここから見る風景がいい』というものより、その日その時間その人との関係値で撮った写真って、その後再現がしにくいから。だから、人をよく撮るようになったんだと思います」
「シャッターを切りたくなる瞬間は2つあって、ひとつ目は自分が見ている景色の中に違和感を感じたとき。<世界はこういうものだ>と感じているものとのズレにすごく敏感な気がします。もうひとつは、<世界はこうだったらいいな>という視点。写真って画角って限りがあるから、ある種現実逃避的なことがしやすいと思っていて。人を撮るときも同じです。大まかな流れ以外はあまり決めてしまわずに偶然が起きやすいようにしています。なので『これが自分っぽいぞ』っていう写真はないです。自分らしさって常に変化していくものだと思うので。僕が発信しているものは“今の自分はこんな感じです”っていうもので、それを見た人から『あなたらしいね』と言われてはじめてそのときの自分らしさを認識する感じなのかもしれないです」
「フィルムカメラに触れたきっかけは、旅行に行くときなんかに使っていた『写ルンです』。現像に出してしばらく時間を置いてネガが返ってきたときに、自分がいいなと思った瞬間が36枚並んでいる、物質として残っていることにすごく感動して。デジタル世代なのもあって、写真が重さを持って手のひらにあるっていうことが結構衝撃だったんです。そこから“かたちに残す”ことに重点を置くようになりました。その中でも『撮りたい!』と思ってからシャッターを押すまでのタイムラグは短いほうがいい……と考えているうちに、今使っているコンパクトフィルムカメラに落ち着きました」
撮りたいと思った瞬間をチェキで切り取って
ポケットに入れて持ち帰る
「風景写真は、全部家の周りで撮ったもの。基本的に『こういうものを撮りに行こう』っていう感じで外に出ることはないです。駅までの道でたまたまシャボン玉をふいている人がいて。これもご近所で、いつもここにいるネコ。朝、出かけるときいつも目が合います(笑)。チェキって少し曖昧な写真になるイメージがあったんですけど、こんなにくっきり鮮やかに撮れるんだなってビックリしました」
「友達のYP夫妻の写真は、僕が撮ったものももちろんあるんですけど、『実際の夫婦がチェキを持ったら』というコンセプトでディレクションして、基本的にはSQ1を渡してお互いを撮り合ってもらいました。セルフィー以外で2人が並んで移っているのはオフショットって感じです」
▲YP夫婦(セルフィ―モードで撮影)
「SQ1は機能がすごくシンプルだから『これで撮ってね』と渡して、軽く使い方を説明しただけで2人はすぐに使いこなしてくれたし、セルフィーも『ここ(セルフショットミラー)を見ながらシャッターを押すだけだよ』って。そういう手軽さもすごくいいなって思います」
▲武居詩織さん(室内でも外でもきれいに撮れる明るさオート機能)
「チェキを使ったのは、今回がほぼ初めてです。普段使っているフィルムカメラとの違いはなにかなって考えると、やっぱりその場で写真が出てくるっていうことが一番大きいですよね。撮ってその場でモノになるから、そのとき撮りたいと思った瞬間とか自分が見ている世界の断片をポケットに入れて持ち帰ることができるし、家に帰ったあと『今日はこんな感じだった』って振り返ることができるじゃないですか。現像するまでのタイムラグがないから、撮ったときの気持ちも覚えているし。そこはチェキの大きな魅力だなと思います」
いつもの風景を特別なものに変えてくれるチェキの魔法
「チェキのSQUAREシリーズみたいに、絶対スクエアでしか撮れないカメラってあんまりないじゃないですか。映像も一般的な写真も長方形が主流ですけど、人の目線って基本的に左上から右下にZを描くように動くらしくて。そうなると、たとえば写真の中央に目立つものがあったとしても視点は左右に流れていくんですよね。縦横の比率が同じスクエアフィルムだと、左右に視点が流れないぶん、奥行きを感じやすくなるのかなって。手前と奥に注目して表現ができるのはスクエアならではだし、最初に話した<世界がこうだったらいいな>って思う、ここだけ見せたいっていう部分をピンポイントで絞るっていう撮り方がしやすかったです」
「SQ1はデザインもとても可愛いと思います。機械っぽくないというか、カメラですよ! っていう感じがしないから、生活に溶け込んでくれるというか。
カメラケースもおしゃれですよね。デザインもいいんですけど、カメラケースに入れたままフィルムの残り枚数も確認できたりして機能的だと思います。YP夫妻もそうだし、今回モデルをお願いした武居詩織さんとヘアメイクさんも『すごくいい!』って言っていました。特にヘアメイクの方は、普段カメラをあまり触っていない人なんですけど、このくらいのシンプルさがすごくいいらしくて。『操作は簡単で使いやすいし、こんなケースだったら持ち歩きたい』って。持っていて気分が上がるようなカメラだなと思います」
photo by 野本敬大
photo by 野本敬大
「機能がシンプルなぶん、撮る! っていう一点に集中できるので、これまでチェキを使ったことがないという人も、パッと撮ったものに感動できるんじゃないかなと思います。逆に、カメラに慣れている人も、写真を撮り始めたときの気持ちを思い出せるかも。加工もなにもない、自分がいいと思ったものがそのまま出てくるから。チェキを持って散歩するのももちろんいいし、家の中とかを撮ってみるのも楽しいんじゃないかなって思います。今のご時世、あえて持っていかずにおうちの中で楽しむっていうこともできると思います。いつも見ているものもチェキで撮るだけで、白縁で額装されたみたいな特別なものになる感じがするから」
text by 野中ミサキ(NaNo.works)
photo by Kohichi Ogasahara
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