臼田あさ美写真集『みつあみ』特別企画 連続チェキインタビュー 第2回:川島小鳥
「記録」と「写真」の違いとは
――ほとんどの写真をフィルムで撮られてますが、フィルムのどんなところが好きですか?
質感ですね。温かみのあるところや、光と影がより自分の思った通りに写し出せるところかな。
――デジタルを使ったこともありますよね?
今でも、たまに使うんです。デジタルのほうがいろいろと細かいところまで鮮明に写るから、撮るものによってその鮮明さがいいときとそうではないときがあって。そのつど使い分けています。
――小鳥さんといえばフィルムのイメージが強いですが、決して「フィルムだけが優れているんだ!」と思っているわけではないということですね。
それは全然思わないです。僕は「写真」そのものが好きなので。カメラだっていろいろモデルチェンジしているし、それぞれで写りも違うと思うので、これから写真を撮り始める人がいるとしたら「デジタルだけ」「フィルムだけ」というんじゃなくて、いろいろなものを使ってみてほしいと思いますね。Instagramみたいなものも出てきて、いろんな写真の楽しみ方ができる時代だと思うので、ひとつに限定するのはもったいないと思います。
――小鳥さんはInstagramをやろうと思ったことはないですか?
ないです。ただ、スマホで写真はすごく撮りますよ。食べ物を撮ったりして。これはどちらかというと日々の記録に近くて、作品ではないですけど。
――記録と作品の大きな違いはなんだと思いますか?
記録には、必ず情報がついてきますよね。例えば食べ物なら「いつ、どこで食べた」みたいなものを記録するために撮ったりする。記録するためだけなら、たぶんフィルムカメラよりスマホのほうが優れていると思います。ただ、僕にとっての作品――つまり「写真」は、記録ではないんです。情報は別に必要なくて、さっき言ったように、1枚でパッと見たときに「過去なのか未来なのかわからない」というか、時間の流れに左右されないもの。
――なるほど。
「自分大好き!」と言える人が好き
でも、それは僕にとってのことなので。スマホの写真も絶対にいいと思いますよ。例えば、アイドルを撮るときなんて、大げさなカメラよりもスマホで撮ったほうが写りがよくなることもあると聞くし。
――変に構えなくてすむ、ということなんでしょうか。スマホでの自撮りが流行っていたりするのも、そういう一面があるのかもしれませんね。
台湾に行ったときにびっくりしたのが、若い人たちがみんな、スマホで自撮りをしていたことですね。日本だとどうしても「ちょっと恥ずかしい」という感覚もあると思うんですけど、台湾の人たちはとても自然に自撮りを楽しんでいて。僕はそういう、「自分大好き!」という気持ちを屈託なく表現できる人たちのことが好きなんです。そういう人たちの中にいると、なんだか安心する。自分大好きと言っても決して自分だけがよければいいというわけじゃなくて、周りに対しても愛があるというか。
――自撮りも1人だけのときもあれば、周囲の友だちと一緒ということも多いですよね。そういう、自分や大事な人のことを「大好き!」という気持ちをなるべく構えずに表現できるツールとしてスマホの写真というものがある時代ということを考えると、チェキが再び人気になっているのも、それに近いところがあるのかもしれません。
そうかもしれませんね。そこからさらにフィルムに興味を持つ人も増えて、僕の好きな銘柄のフィルムも、もっと安く作られるようになるといいなと密かに思っています(笑)。
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『みつあみ』インタビュー第4回:臼田あさ美 はこちら
interview by Takafumi Ando
photo by Kotori Kawashima
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