
【徹底比較】遠景、接写、セルフィー、夜景!フォトグラファーによる機能別おすすめチェキ比較&解説【instax Life プロジェクト】
ひと口に「チェキ」と言ってもさまざまな機種があります。最近では「“チェキスクエア” instax SQUARE SQ20(以降、SQ20)」や「“チェキ”instax mini LiPlay(以降、LiPlay)」などアナログとデジタルのハイブリッドチェキまでも登場しており、楽しみ方の幅も広がっています。mini、SQUARE、WIDEなどフォーマットの違いごとにチェキをお持ちの方はいらっしゃるかもしれませんが、「チェキで景色をたくさん撮りたい!」というときに最適のチェキを迷わずに選ぶことはちょっと難しいですよね。そこで「接写」「セルフィー」「遠景」「夜間の撮影」の4つの機能/モードにフォーカスし、チェキを日常的に楽しんでいるフォトグラファー・鈴木文彦が撮り比べをしてみました。撮影時のちょっとした感想も交えながらお伝えしていきます。なお、11月6日に発売されたスクエアフォーマットの新製品「“チェキ”instax SQUARE SQ1(以降、SQ1 )」は今回の撮影時には間に合わなかったので作例はありませんが、次回の記事をお楽しみに!
PROFILE
鈴木文彦

フィルム写真専門誌『snap!』を創刊したのち、『フィルムカメラの教科書』『中判カメラの教科書』
『チェキit!』『オールドレンズの新しい教科書』など、趣味の写真にまつわるムックや書籍を企画/編集/執筆/撮影。現在、『レンズの時間』『FILM CAMERA LIFE』を定期的に刊行中。
1.接写におすすめチェキ!
最初のテーマは「接写」です。アナログタイプのチェキの場合、被写体から30cm〜50cmくらいで撮ることを「接写」と言い、お花、食べ物、お気に入りの小物などを主役にしたいときの撮影距離を指します。チェキに限らずカメラは被写体に近づける距離に限界があり、限界を超えるとピンボケの写真になってしまいます。そして、アナログのチェキはファインダーとレンズの位置がズレているため、真ん中に撮ったつもりでも主役が端に写ることもあり、上手く撮るにはコツが必要です。
「“チェキ”instax mini 11(以降、mini11)」、「“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック(以降、mini90)」、「“チェキスクエア” instax SQUARE SQ6(以下、SQ6)」などは「接写モード」が用意されおり、レンズがちょっとだけ通常時よりも飛び出すことで、近い距離にピントが合うようになります。一方でアナログとデジタルのハイブリッドチェキSQ20とLiPlayは、接写モードはなくても抜群の接写能力を誇ります。「“チェキ” instax mini25(以降、mini25)」と「“チェキワイド” instax WIDE 300(以降、WIDE)」は別途接写レンズを付けることで接写が可能に。大きく分けて3パターンがあると心得ておきましょう。
接写モード搭載チェキ:mini11、mini90、SQ6、SQ1
接写レンズ同梱チェキ:mini25、WIDE
接写にもともと強いハイブリッドチェキ:LiPlay、SQ20
さて、ここからは撮り比べ比較。全て花が中央に来るようにファインダーを覗き、約40cmの距離から撮影しています。
▲mini11で撮影
花は鮮明に描写されているものの、ファインダーでは花が中央に来ていましたがかなりズレが出ました。ファインダー中央から少し左に主役を配置するといいかもしれません。
▲mini90で撮影
花はかなり鮮明に描写され、また中央に近い位置に写ったことから、ズレを考慮したファインダーになっていることがわかります。
▲SQ6で撮影
陰影がありコントラスト良好。味わいのある描写をしてくれました。しかし中央からのズレは大きいので「左ずらし」は必須技として会得しておきたいところです。
▲LiPlayで撮影
さすがハイブリッドチェキ! ファインダーではなく液晶モニターで構図を合わせるのでズレなどは起きませんし、接写能力が高いために鮮明に花を写しています。
▲WIDEで撮影
最後にWIDEです。これは接写レンズを付けておらず最短撮影距離が他機種よりも長いため約1mから撮影しています。鮮明さはありませんが、フィルム写真の風合いは抜群です
ちなみに、ハイブリッドチェキ(LiPlay、SQ20)はレンズ先端から約10cmまで近づくことができます。スマホなども接写に強いですが、それと同じですね。LiPlayで10cmまで寄るとこのように撮れます。素晴らしいです。花を思い切り大きく写すことができます。
▲LiPlayで撮影
最短撮影距離が他機種より長いWIDEは接写レンズが同梱されていますが、接写レンズなしの仕上がりが気になる方はこの1枚を見てください。
▲WIDEで撮影
グッと近づいて撮影をすると、ピントが合わない手前の花は「前ボケ」となります。前ボケとなった花は粒子感も美しく、フィルムカメラで撮影をした作品的に見えます。スペックを逆手に取ってみるのもおもしろいですね!
2.セルフィーにおすすめチェキ!
チェキでの人気の使い方に「セルフィー」があります。そう、自撮りです。チェキでのセルフィーは美肌に見えることで人気がありますし、出掛けた先などでセルフィーを撮っておけば、思い出としても記録としても残すのが楽しくなります。
セルフィーはカメラを自分の顔の方に向けて撮るためファインダーを覗いたり液晶モニターで構図を決めることはできません。しかしチェキの中でもニーズの多い撮影方法であるセルフィー。mini11、mini25、LiPlay、SQ1、SQ6、SQ20には「セルフィーミラー」がレンズ横に付いており、そこに自分の顔を写してシャッターを切れば、きちんと写真に顔が入るようになっています。同時に、セルフィーでは手を伸ばした距離からの撮影になるので、接写撮影に近い撮影距離となりますが、mini11、SQ1、SQ6は「セルフィーモード」が搭載されており、レンズが接写モードになるのに加えて、少し明るめに写るように露出が自動調整されます。
セルフィーミラー搭載チェキ:mini11、mini25、LiPlay、SQ1、SQ6、SQ20
セルフィーモード搭載チェキ:mini11、SQ6
▲mini11で撮影
セルフィーミラーがあるため顔は中央に。そしてセルフィーモードも搭載されており、かなり明るめ美肌に写りました! いわゆる「盛れている」セルフィーと言えます。
▲SQ6で撮影
同じくセルフィーミラー+セルフィーモード搭載の機種。中央に明るく写すことができました。なお、新製品SQ1にもセルフィーミラー+セルフィーモードが搭載されています!
▲LiPlayで撮影
接写同様にセルフィーの撮影距離には余裕がありますが、デジタルのためかなり鮮明な描写になってしまっています。また露出補正をしないと少し暗めですね。かわいいセルフィー、という雰囲気ではないかもしれません。ただし、他のチェキと比べると明らかに広角で、体もたくさん写せています。洋服や背景の情報も込みで撮りたい場合には強い味方です。
※露出補正:画像の明るさを調整する機能。被写体が明るすぎたり、暗すぎたり、被写体と背景のコントラスト(明暗の差)が大きい場合に使用します。
<手順>
[1] 撮影画面で、[MENU/OK]を押す
[2]露出補正を選択し、明るさを調整
まとめると、セルフィーモードが付いていない機種は「Lボタン」または露出補正で明るめにする。これが鉄則でしょう! カメラを少し傾けて動きを出したり、背景に鮮やかな色を持ってくるなど、ちょっとしたこだわりを入れるとよりセルフィーは華やかになります。
3.遠景におすすめチェキ!
旅のお供などにも最適なチェキ。人物撮影だけでなく、美しい風景を撮りたくなることも多いです。「遠景モード」が搭載されている機種は、数メートル以上の距離を撮影する場合、よりピントがピシッと合った鮮明な写真にしてくれます。例によってハイブリッドチェキにはこのモードはありませんが、ハイブリッドチェキはAF搭載のため必要ないのです。ちなみに私は3〜5mくらい離れていれば遠景モードを選ぶようにしています。そのくらい仕上がりに差が出ます。
遠景モード搭載チェキ:mini90、mini25、SQ6、WIDE
▲mini90で撮影
この鮮明さ! この濃厚な発色! チェキでもここまで写る、と改めて驚いてしまいます。ちょっと濃すぎると思う場合はLボタンで明るさを調整してみましょう。
▲LiPlayで撮影
緻密さはmini90にとても近い感覚を受けますが、発色の傾向がわずかに異なります。濃密なのはmini90、スッキリしているのはLiPlayではないでしょうか。
▲SQ6で撮影
SQ6は全体的に明るめに写る機種ですが、遠景の場合、中央が明るく、周辺になるに従って濃厚になるという「トンネル効果(=周辺減光)」が顕著であることがわかります。トンネル効果により中央に目が向きますし、作品っぽくドラマチックに見えます。これはアリです!
▲SQ20で撮影
鮮明です。そして周辺まで均一な明るさで優秀な写りをしています。思い出を上質なチェキプリントで残したい人にオススメの写りです。
▲WIDEで撮影
mini2枚分の面積は大迫力! そして遠景モード時のフォーカス精度も高く、とても緻密にマンションを写してくれました。同時にドラマチックなトンネル効果も現れており、個人的には風景が多い場合の撮影にはWIDEがファーストチョイスであるのは間違いないです。遠景=風景ですから、ちょっとでも大きな画面サイズで撮るというのはいいと思います。そして味わい重視のフィルムチェキ、クリアで緻密なハイブリッドチェキ。このように覚えておきましょう。
ここでアザーカットもご紹介しておきます。やはり濃厚mini90、中央明るいSQ6、大迫力WIDEは別カットでも味わえました。
▲mini90で撮影
▲SQ6で撮影
▲WIDEで撮影
4.夜間/暗いところでの撮影におすすめチェキ!
チェキはパーティーシーンでも活躍するカメラです。必然的に夜や暗所での撮影機会は増えますが、チェキはどの機種もフラッシュが付いているため、確実に至近距離の人物を撮ることはできます。しかし、ここで少しこだわりたいのは「背景がどこまで写るのか」ということ。通常のフラッシュ撮影では背景が暗く落ち込んでしまい、どのような状況で撮影したかがわからなくなります。これを少しでも解消してくれる機種を探したいと思います。また、フラッシュの光量によっては顔が白飛びすることも。調光の加減も同時に見ていきます。
▲mini11で撮影
mini11とSQ1は「明るさオート」という機能が付いており、暗い場所ではできるだけシャッタースピードを遅くして背景も明るくしてくれるようになっています。これは特に設定は必要なく、カメラが判断してくれます。結果はご覧の通り。発光量をかなりシビアに調整してくれるため、顔が全く白飛びしていません。つまり、暗い場所で花などを撮ってもディテールが描写される可能性が高いということ。エントリーモデルですがフラッシュはとても優秀です。
▲SQ20で撮影
フィルムチェキの場合、必要な明るさを示す「ISO感度」はフィルムに依存しますが、SQ20やLiPlayはISO感度は2倍までしか意味なくレンズが明るい事が圧倒的に威力を発揮します。ISO1600という高感度に対応しているため、このように背景までしっかりと写し撮ってくれます。ハイブリッドチェキ、強し。
さて、暗所での撮影には他に「夜景」の撮影もあります。チェキで夜景は無理だと思われがちですが、バルブ機能が搭載されている3機種であれば、都市夜景くらいであれば撮ることが可能になります。
バルブモード搭載チェキ:mini90、LiPlay、SQ20
▲mini90で撮影
フィルムチェキで唯一のバルブ搭載機。最大10秒までシャッターを開くことができます。固く安定した場所に置いて撮ることもできますが、できれば小型三脚を使いたいところです。夜景だけでなく、雰囲気の良いお店の中でフラッシュを使わずに撮影する際にもバルブモードは活躍します。ちなみに、フラッシュ発光禁止モードが付いている場合はONにしてスローシャッターを使うのも、雰囲気重視撮影には有効な機能です。
フラッシュ発光禁止搭載チェキ:mini90、LiPlay、SQ6、SQ20
▲SQ20で撮影
高感度+バルブモードの威力は絶大。mini90では撮ることができなかった光量の少ない遠景夜景も撮ることができました。
わずか4つの撮影テーマでも、ここまで機種により得手不得手、特徴があることがおわかりいただけたと思います。自分が撮りたいシーンに適したチェキを使うことで、グッと写真の完成度は高まるのです! ぜひ2台持ち、3台持ちなど、チェキの使い分けにチャレンジしてみてはいかがしょう。
そのほか【使い方】記事を読む
【豆知識vol.01】チェキって3種類あるって知ってた?
今回使用したチェキ
“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック

今回使用したチェキ
“チェキ” instax mini LiPlay

今回使用したチェキ
“チェキ” instax mini 11

今回使用したチェキ
“チェキ” instax mini 25

今回使用したチェキ
“チェキスクエア” instax SQUARE SQ 6

今回使用したチェキ
“チェキスクエア” instax SQUARE SQ20

今回使用したチェキ
“チェキワイド” instax WIDE 300

Text &Photo by Suzuki Fumihiko
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