写真家・柏田テツヲ×Evo。旅にチェキが欠かせない理由とは?
天気や時間によって変化する旅先の景色。そして、人・モノとの出会いを通じて生まれるさまざまな感情。それらを形に残すのにぴったりなチェキが、「“チェキ” instax mini Evo(以降、Evo)」。「レンズエフェクト」と「フィルムエフェクト」をかけ合わせることで、100通りの写真表現ができるモデルです。今回そんなEvoを使うのは、旅先で出会った自然や人を独自の視点と色彩感覚で切り取る写真家、柏田テツヲさん。北海道と宮崎県で撮影をしてもらいました。柏田さんが旅先で感じたこととは?そして近年、柏田さんが写真表現で意識することとは? 幅広くお話を伺います。
PROFILE
柏田テツヲ
旅をしながら自然や人に出会い、そこで感じた疑問に目をむけて人と自然との関係性を軸に独自の視点で作品を発表している。
受賞歴
2019年 第42回写真新世紀 佳作 サンドラ・フィリップス氏選
2020年 第43回写真新世紀 佳作 瀧本幹也氏選、第22回写真「1wall」入選
2021年 JAPAN PHOTO AWARD 受賞 Charlotte Cotton / Mutsuko Ota選
北海道で作り出す“ロードムービー”。柏田さんの作風ができるまで
▲柏田さんがフィルムカメラで撮影した流氷
「大学時代、授業の内容に興味が持てなくて。代わりにのめり込んだのが旅とカメラでした。文系の4年制大学なのに、なぜかアートや写真に造詣の深い友人が多かったのが、そのきっかけの一つですね。ある時、『海外に写真の勉強をしに行きたい』と話したら、旅をテーマにした『ロードムービー』というジャンルの古い映画をおすすめされて。当時らしいざらついたノイズのある映像や、そこに写っている景色や人物のすべてが新鮮だったんです」
旅と写真にのめりこんだきっかけについてそう語る柏田さん。今回、北海道への旅で撮影したのは、飛行機のウイングや、雪が積もった道路、流氷が浮かぶ海面などの風景。柏田さんの旅を追体験できる、まさにロードムービーを観ているような気持ちにさせられる写真でした。
「行く先々での景色を捉えてストーリー仕立てにするという軸だけ決めて、それ以外は自由に写真を撮りました。今回は作品を残すというよりは、肩肘張らずに息抜き感覚で臨みたいなと。印象に残ったのは、やはり最後に見た流氷ですね。流れてくる量は日によってまちまちみたいなのですが、この時は船が沖に出られないくらい多くて。日本にもこんな風景があるのかと思いました」
「せっかくの機会なので、Evoのエフェクトも色々試してみました。『ソフトフォーカス』や、普段フィルムカメラでも使うことのある『ハーフフレーム』が好みでしたね。『ミラー』のような、日頃の写真表現では使わないようなレンズエフェクトで遊ぶのも面白かったです」
アメリカやオーストラリアなどを巡り、常に「旅」を作品に昇華し続ける柏田さん。その中で感じる写真への魅力は変化し続けていると話します。
「昔は自分が写真を撮ることで、旅先で出会った人が喜んでくれるのがやりがいでした。でも最近はそうではなくて、写真というツールを通じて自分の興味を広げられることに魅力を感じています。今回北海道に行ったのも、年々量が減っている流氷を撮りたかったから。多分、写真をやっていなかったら流氷のことを直接見て学ぼうとは思わなかったはずなんです。そんなふうに写真を入口にして社会と繋がれることが、今は嬉しいですね」
宮崎で見た鮮烈な“青”。柏田さんと色の根深い関係
凍てつく寒さの2月の北海道を撮影したあと、春めき始めた3月の宮崎県を訪れた柏田さん。撮影したのは、夏の記憶が呼び起こされるような海や、異国情緒を感じさせるヤシの木などの写真でした。
「北海道が真っ白な世界だったので、次は綺麗な青空や海を撮りたいなと思って。世界観が真逆の場所を選びました。北海道は写る要素が少ない分シンプルな写真だったのですが、今回はエッジーなエフェクトを多用しています」
「『ブルー』のフィルムエフェクトを使って空や海の青色を強調しました。晴れた空をあえてモノクロで撮ったのも気に入っていますね。あと、海辺で僕の影が写っている写真は、波に濡れないようにカメラを持ち上げた時にたまたま撮れていたもの。狙って撮った写真とは違った良さがあると思います」
北海道では黄色がかったレトロな色味、宮崎では鮮烈な青色にと、全く異なる色使いで海を表現した柏田さん。自身の作品における“色”に対する葛藤と変化をこう話します。
「もともと、ニューカラー派(※)の影響を受けていたんです。彼らのように『この作家といえばこの色味』と言われるような仕上がりをずっと追求していて。実際『柏田テツヲといえばニューカラー』という評価をもらえることも多かった。でも、本当は場所も人も、それぞれに最適な色があるんですよ。それに気付いてからは色への執着が薄れて。今では、自分が見て“いい”と思った感覚をそのまま形にしています」
※1970年代にアメリカで登場した表現の一つ。主に旅先の風景を、当時はまだ珍しいカラーフィルムで収めたアート写真のこと。ウィリアム・エグルストンをはじめ、鮮烈な色彩の写真家が多い。
「フィルムカメラ派の僕には欠かせないツール」。柏田さんが語る旅とチェキ
背面にモニターが搭載されたスクエアモデルのSQ10を愛用するなど、チェキとの関係も深いと話す柏田さん。Evoを使った感想についても伺いました。
「100通りの表現ができるにもかかわらず、シンプルでとても使いやすい操作性でした。『ミラー』や『ぼかし』などのレンズエフェクトは、僕が普段使わない表現なので遊び感覚で使えて。それでいて『モノクロ』や『ハーフフレーム』はいつもの機材に近い感覚で撮影できるのもいいですね」
普段とは違う新鮮な表現ができる“息抜きの道具”としてEvoを活用していた柏田さん。さらに、「フィルムカメラでしか作品を撮らない僕にとって、チェキは欠かせないツール」とも話します。
「フィルムカメラは現像に時間がかかるので、協力してくれた方に、その場で写真の仕上がりを見せられないんです。その後、一切連絡がつかなくなることもよくあって。そういう時はチェキを撮って、その人と一緒にいた思い出として手渡しています。じわじわと画像が浮かび上がってくるのをその場で待つ時間もいいし、その結果、思っていたのと異なる仕上がりになることもありますが、それはそれで“一期一会”な感じがして好きですね」
「2019年にオーストラリアで森林火災があった時、現地を訪れたんです。そんな中で、被災したにもかかわらず、僕を家に迎え入れて料理を振る舞ってくれた人がいて。そういうお世話になった人に渡して、お互いの思い出にできるのが一番のチェキの魅力だと思います。アメリカでも、喜んでくれるのでよく子供にあげていましたね。『旅とチェキは相性がいい』。それはこれまでに何度も感じてきたことです」
思い出を額縁のように彩る。シックなチェキフィルム
左:「ブラック」/右:「ストーングレー」
様々なエフェクトを活用した柏田さんのチェキですが、もう一つ注目してほしいのが、バリエーション豊富なチェキフィルム。北海道での写真には被写体が際立つ「ブラック」を、宮崎県での写真にはシックな印象の「ストーングレー」を主に使用することで、旅先での思い出がよりアーティスティックに彩られています。被写体に合わせたチェキフィルムを組み合わせて、ぜひチェキでの表現の可能性を広げてみてくださいね。
text by 山梨幸輝
photo by 柏田テツヲ
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